2017年3月12日日曜日

官側から考える「プライム企業」と役割

防衛産業に身を置くと、「プライム企業」という言葉を日常的に耳にすることでしょう。

本編では、4回に分けてプライム企業についてお伝えしていきます。

 1 防衛産業におけるプライム企業とは~辞書的な解釈編
 2 官側から考える「プライム企業」と役割 (今回)
 3 民側から考える「プライム企業」と役割
 4 これからの「プライム企業」


■官側から考える「プライム企業」とは

(官側:以下、防衛省・防衛装備庁・自衛隊を官側と記します。)

官側の立場からすると、プライム企業とは以下の4つの要件を
満たすことが必須であると筆者は考えます。

1.官側との信頼関係を構築・発展させること
2.サプライチェーンの頂点会社として、
 同業他社・一次二次下請けと信頼関係を築き、発展させること
3.プライム企業としての自主性・自発性を示すこと
4.リソースの確保・維持・発展に努めること


■役割と期待


1. 官側との信頼関係を構築・発展させること


官側と真の信頼関係を築いて深めていくためには、
目的を共にして、プロジェクトで発生する問題点も共有し、
官民それぞれの役割を全力で全うすることが必要です。

プロジェクトを進めれば必ず問題は発生します。
官民で協議して解決していかなければならない場面が必ず出てきます。

そのような時に、より積極的に問題解決に努力することが
信頼関係につながり、次の課題のより良い解決に繋がります。

逆に、プライム企業がそこまでの責務は無いとの立場を前面に出せば、
信頼関係を築くことはできず、官側の期待するプライム企業とは
成り得ません。


2. サプライチェーンの頂点会社として、

    同業他社・一次二次下請けと信頼関係を築き、発展をすること


防衛装備品と一言で述べても、各種あります。
防衛装備品は一般的にICT製品などと比べて大変息の長いものになります。

わかりやすい一例として護衛艦を例に挙げると、
海上自衛隊の護衛艦「しらね」(平成27年3月除籍)は、実に約30年間
活用されています。
この30年の間、年次検査・定期検査や故障における部品の交換、
新システムとの連携などが求められます。

そのため、プライム企業としては、一次・二次下請け会社からの
調達品の安定確保や、技術的な検討などへの対応が必須となります。

ここで信頼関係を構築し、かつ一次・二次下請け会社にも十分な利益を
確保することがサプライチェーンの頂点会社としてのプライム企業には
求められるのです。

ここで得た信頼によって、人・モノ・カネ・時間のない苦しい中での
プロジェクトの立ち上げと成功につながり、プライム企業としての役割を
果たせるのです。

さらに護衛艦を例にすると、タイプシップの設計・建造を他造船会社へ
依頼することもありえます。

このように、同業他社からもリーダーとして認められることも、
プライム企業には必要です。


3.プライム企業としての自主性・自発性を示すこと


官側の要求に対し、そのまま回答し製品を提供するだけでは、
プライム企業とは呼べません。
官側と一言で申しましても、プライム企業にとって、
ステークホルダーでもあります。

また、人事異動で責任者が替わることもあります。

そのため、防衛省(内局・幕)や防衛装備庁・部隊と自主的に
意見交換を行ってプロジェクトを可能な限り円滑に進め、
問題点は協議して解決する必要があります。

さらに、
プロジェクトによっては、官側に対し世界の運用構想調査結果などを報告し、
製品の購入を提案するのか、研究すべきかなどを提案する必要があります。   
通常の民間産業で見られる潜在ニーズの提案ということも、自発的に
行わなければなりません。


4. リソースの確保・維持・発展に努めること


官側と直接契約があるというだけでは、プライム企業とは呼べません。
先の護衛艦「しらね」の例でも記したように、
長期にわたり広範囲の事項について検討・対応することが求められます。

護衛艦という複合的な機能ではなく、
一つ一つの機能(System of Systems)をとってみても、
検討・対応を求められるポイントは多岐に渡ります。
(検査・整備・設備・建屋・教育・完成図書・マニュアル・機能管理など)

これを借り上げで5年以上、装備品となれば10年以上の長期にわたって
継続して対応することになります。

そのためには、人・モノ・カネ・時間という企業のリソースをどのように
配分するかという検討も必要になります。
一つの機能を提供してからその終焉までを担い、更にその間に次世代の
機能にも対応することができて、初めてプライム企業と認められるのです。


今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。
加筆・修正は失礼ながら随時あるかと思います。ご容赦ください。


次回は、
3.民側から考える「プライム企業」と役割
について記したいと思います。