本編では、4回に分けてプライム企業についてお伝えしていきます。
<記事リスト>
1.防衛産業における「プライム企業」とは ~辞書的な解釈編~(今回)
2.官側から考える「プライム企業」と役割
3.民側から考える「プライム企業」と役割
4.これからの「プライム企業」
【プライム企業って、どういう企業?】
防衛産業における「プライム企業」とは、
防衛省・防衛装備庁を顧客とする企業のことです。
プライム企業は、通常は大企業であることが多く、
防衛装備における製造から販売までの中で最も大きな役割を担います。
防衛は数百、ときには千を超える企業が関わって、初めて形を成します。
そのため、研究の委託や完成品を提供する場合、
複数の会社の機能を組み合わせる必要が出てきます。
プライム企業は、自社内の技術・資本だけではなく、
数百社にわたる下請けの会社をマネージメントして完成させ、
製品やサービスを提供します。
【代表的なプライム企業 売上トップ3は? 】
国内の防衛部門売り上げ上位3社は、以下の通りです。
1位:三菱重工業株式会社(MHI)
2位:日本電気株式会社(NEC)
3位:川崎重工業株式会社(KHI)
皆さん知っての通り、防衛を専門にしている会社ではないことがわかります。
しかし、3社とも戦前から防衛産業に深く関わってきた歴史があります。
例えば、
・海上自衛隊 護衛艦「あきづき」
・帝国海軍 戦艦 「武蔵」
どちらも、三菱重工長崎造船所で作られました。
【日本におけるプライム企業の特徴 】
➀売上比率が平均5%と少ない
米欧の防衛産業各社は、防衛事業の売り上げが50%以上の会社が多いです。それに対し、日本のプライム企業における防衛事業の比率は、なんと平均5%。
多くのプライム企業は、防衛が主な売り上げではなく、民間用製品に
売上を依存していることになります。
②海外への輸出
防衛装備移転三原則 (平成26年4月)により、日本もようやく防衛装備品の輸出が可能になりました。
オーストラリア政府・海軍への「そうりゅう型」潜水艦輸出の検討は
記憶に新しいものですが、結果はフランス企業が受注しました。
つまり、日本のプライム企業の顧客は、現時点でも国内(自衛隊)のみで
小さな市場でパイを奪い合うような状況が生まれつつあります。
③自衛隊OBが従事している
防衛省・自衛隊では1佐以下の階級の方は、56歳以下で定年を迎えます。そのためプライム企業に就職され活躍される方が多くいます。
ただし、就職先が防衛省との間に契約を締結した営利企業の場合は、
離職前の5年間に営利企業との契約に携わったことがなく、
かつ防衛大臣の承認が必要です。
➃工廠(こうしょう)を持たない
日本国・防衛省・自衛隊は、工廠(軍需製造の国営工場)を持っていません。つまり、国防に必要な防衛装備品の全てを、民間企業が提供しているということです。
同時に、技術基盤もプライム企業に多くを依存しているということになります。
➄ 財界・工業会など
大多数のプライム企業は「一般社団法人防衛装備工業会(JADI)」の会員ですいかがでしたか?
海外におけるプライム企業とは、大分状況・歴史が異なることを
ご理解いただけたかと思います。
次回は、
2.官側から考える「プライム企業」と役割
について記したいと思います。
加筆・修正は失礼ながら随時あるかと思います。
ご容赦ください。