2017年3月31日金曜日

平成28年度防衛省シンポジウム 今後の日米同盟の方向性(3)

 本編では、以下3回に分けて記していきたいと思います。
    1 防衛省シンポジウム概要と解釈の難しさ_その1
    2 解釈の難しさ_その2
    3 解釈の難しさ_その3とこれからの姿 (今回)


平成28年度防衛省シンポジウムの概要については、
防衛省シンポジウム概要と解釈の難しさ_その1 を参照してください。


■解釈することの難しさ_その3


前回記したように、3-2 シンポジウム参加者からの事前質問に対する
パネリストの回答として冷戦型と、グレーゾーンからの発展型の戦争形態が
あるとの意見がありました。

・中国の行動は、グレーゾーンからの発展型(グレーゾーン事態)

グレーゾーン事態を記す前に、一度警察と自衛隊の関係を整理します。

 海上保安庁:日本の海上警察組織です。海上保安官は特別司法警察職員です。
 海上自衛隊:日本の防衛省に属する海上組織です。

事態というものを、平時と有事にきれいに分けることができれば、
平時においては、海上保安庁が警察として対処し、海上自衛隊は
抑止するとなります。

有事においては、海上自衛隊が対処するとなります。

グレーゾーン事態とは、平時と有事をきれいに分けられない事態を指します。

抑止・対処する日本側から見れば、海上保安庁の警察力では対処できず、
海上自衛隊で対処するには、 相手国の組織的・計画的な武力攻撃とは見なせず、
防衛出動に伴う必要な武力の行使をできない状態です。

想定される具体例としては、以下4つのことあります。

 1. 日本の無人島に、他国の大量の漁船が領海侵犯した上に、
   無人島に上陸する。

 2. 同時に、日本を初め、国際・国内に対し自国の正当性を
   マスメディア・インターネット各種会議の場で主張する。

 3. 日本を初め、国際社会に対し、無人島の実効支配権を相手国に
   渡した方がより安全な社会であると、納得させる。

 4. 国連や仲介国、その他国際裁判所などで、法に基づく正当性を主張し、
   有利な判断・判決を勝ち取る。

さらに、グレーゾーンからの発展型の戦争であれば、
上記1~4を有利に進めたうえで正規軍による開戦と成り得るでしょう。

この状態になってしまえば、国際社会の正当性を
日本は多く失うこととなりますので、海上自衛隊を中心に無人島を
防衛できたとしても、その領有権を主張し、実効支配権を維持することは
相当に難しいこととなります。


■これからの姿


 パネリストの方のから、平時・グレーゾーン・有事を横軸、時間を縦軸として
全ての平面に対処できるようにする必要があるとの発言がございました。
その通りだと思います。

私があえて付け加えるのであれば、もう一軸加えて空間を埋める必要があると
考えます。

その一軸とは、防衛する領域の軸です。

軸の要素には、国内・国際世論、心理、法律、陸海空防衛力に付加して
新たに、「サイバー空間」と「宇宙」を加えさえて頂きたいと思います。


今回はこのあたりで終わりにしたいと思います。

加筆・修正は失礼ながら随時あるかと思います。ご容赦ください。


次回は、 基地内での政官民コミュニケーション (予定)
について記したいと思います。